スクワットで「膝が内側に入る」原因をトレーナーが解説
今回の記事では、下半身のトレーニング種目の王道種目「スクワット」で膝が内側に入ってしまう原因について解説したいと思います。
よくスポーツジムやフィットネスクラブで指導を受けるときにスクワットでは「膝が内側に入らないように意識して下さいね〜」と言われることがあると思います。トレーニングの教科書や専門書にも、注意点として書かれていて基本的な考え方ですよね。
スクワットで「膝が内側に入る動き」について、個人的な見解としては「膝が過度に内側に入る動きはよくない」または「目的なく膝が内側に入る動きはNG」と考えています。
膝が内側に入ってしまう場合のほとんどが筋力や柔軟性などの機能面が不足していることが原因で起こります。つまり、何かしら根本的な原因があって起こるエラー動作ということ。
スクワットで膝が内側に入る主な原因と改善方法を詳しくお伝えします。スクワットで「膝に違和感がある人」「膝が内側に入ってしまう人」「正しいフォームがわからない人」は、是非ひとつの参考にしてみてください!
スクワットで「膝が内側に入る」デメリット
スクワットで膝が内側に入ると、一部の靭帯や腱、半月板などの組織にストレスがかかってしまいます。内側には、組織が伸ばされるストレスが、外側には、組織が圧縮されるようなストレスが加わってしまいます。
そのような膝に対するストレスがスクワットなどの動きの中で何度も繰り返されることで膝が負傷(ケガ)してしまいます。
- 鵞足炎
- 半月板の損傷(とくに外側)
- 内側側副靱帯の損傷
- 膝蓋靭帯炎
膝が内側に入ると膝に負担をかけてしまい、上記で挙げたようなケガ(外傷や障害)が起こりやすくなってしまいます。
スクワットで「膝が内側に入る」主な原因
スクワットで膝が内側に入る(ニーイン)原因は、以下のようなことが挙げられます。
それぞれの原因について詳しく解説していきます。
①お尻の筋肉(臀筋群)が弱い
お尻の筋肉には、身体の中でも1〜2番目に大きな面積とされる大殿筋をはじめ、中殿筋という筋肉が身体の表面近くについています。より中の方(深層)には、小殿筋や深層外旋六筋という筋肉もついています。
足を外に捻る動きで活動すべき筋肉の活動が弱くなってしまうと、スクワットの動きの中で膝が内側に入りやすくなってしまいます。
お尻の筋肉(臀筋群)の活動が弱くなってしまって、膝が内側に入っている場合には、スクワットの前に臀筋群の活動を活性化(お尻の筋肉にスイッチを入れる)させるトレーニングやエクササイズを入れると効果的です。
お尻の筋肉にスイッチを入れるトレーニング①
お尻の筋肉にスイッチを入れるトレーニング②
お尻の筋肉にスイッチを入れるトレーニング③
②股関節/骨盤の可動性(柔軟性)が低い
股関節/骨盤の柔軟性が不足していて関節の動きが悪くなると、その代償として膝は内側に入りやすくなります。
股関節を曲げる動きには、お尻の筋肉(殿筋群)や太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)などの柔軟性が必要です。これらの筋肉の柔軟性が低い場合、股関節を曲げる動きが制限されて、深くしゃがみにくくなり膝が内側に入ってしまいます。
しゃがむ深さによって股関節に求められる関節の角度は異なってきます。
一番下・深い位置までしゃがむフルスクワットでは、ほぼ最大域の曲げる動きが必要です。パーシャルスクワットやハーフスクワットでは、求められる角度は浅くなります。
股関節の動きが悪くなって膝が内側に入っている(ニーイン)場合には、大臀筋や中臀筋、ハムストリングスなどの後方組織を柔らかくするストレッチやモビリティエクササイズを実施してみて下さい。
お尻の筋肉を柔らかくするストレッチ①
太ももの裏側の筋肉を柔らかくするストレッチ②
股関節の動きを柔らかくするストレッチ③
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③足関節(足首)の可動性(柔軟性)が低い
足関節の柔軟性が不足していて関節の動きが悪くなることも、膝が内側に入りやすくなる一つの原因です。
足関節の曲げる動きが悪くなってしまう原因としては、下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋肉が硬くなること、骨の動きの問題(距骨の滑り・転がりが悪くなっている)が多いです。
故にスクワットの動きでは、股関節も足関節も「曲げる動き」が極めて重要な要素となってきます。下半身の3つの主要な関節(股関節・ひざ関節・足関節)を同時に曲げる動きをトリプルフレクションと言います。
足関節の動きを柔らかくするストレッチ①
足関節の動きを柔らかくするストレッチ②
④X脚(膝外反)になっている
X脚は、元々の立ち姿勢で膝が内側に入っている状態のことです。足全体の見た目が「X」のように見えることからX脚と言われています。内股姿勢と呼ばれたりもしています。
X脚は、生まれつき骨の形状などの影響で構造的な要因として起こる場合も多いです。そのため、構造的な要因の影響が強い場合には、X脚を改善・修正することは難しい場合があります。
- 臼蓋形成不全
- 先天性股関節脱臼
- 大腿骨の頚体角が大きい
上記に当てはまる場合は、元々の構造的な問題として膝が内側に入りやすい状態と考えられます。
機能的なX脚は、治せる可能性があります。機能的なX脚は、例えば太ももの骨(大腿骨)やスネの骨(脛骨)が内側に捻れている場合が挙げられます。機能的なことが問題で起こるX脚の場合は、ストレッチやエクササイズを通じて修正できる可能性があります!
⑤足の土踏まずが潰れている(扁平足)
足の土踏まずが潰れている状態のことを扁平足と言います。足の土踏まずが潰れた状態になると、それに連鎖するようにスネの骨(脛骨)も内側に捻れて、さらに連鎖的に太ももの骨(大腿骨)も内側に捻れやすくなります。
結果的に膝が内側に入ってしまう状態(ニーイン)になります。
扁平足にならないためには、足の土踏まず部分のアーチ(内側の縦アーチ)を維持するための運動やエクササイズを実施することが大事です。
一見、関係のないように感じる人も多いかもしれませんが、膝が内側に入る原因は、膝自体にないことがほとんどで、股関節や足首に根本的な原因が隠されていることも多いのです。
⑥フォームが間違っている
カラダの機能的な問題、構造的な問題がなくても、そもそものスクワットのフォームが間違っていることが原因で膝が内側に入るケースも少なくありません。
スクワットを実施する際は、正しい動き・実施する際のポイントを押さえた中で取り組むようにしましょう!
フォームが気になる方は、スクワットを実施する際のポイントを簡単にまとめているので是非参考にして実践してみて下さい。
- 足は肩幅くらいに開く
- つま先は少し外側に向ける
- つま先と膝は常に同じ方向に向ける
- しゃがむときは椅子に座るイメージで
- 立ち上げるときは母趾球・小趾球・踵でしっかり床を踏む
⑦重心の位置が不安定で偏っている
重心の位置が不安定になっている人もスクワットで膝が内側に入りやすいです。土台となる足裏の感覚(平衡感覚)には、脳の機能や体性感覚などの機能が関わってきます。
小指側の荷重(小趾球)が大きくなると、脚は全体的に外側に開きやすくなります。反対に動作中に土踏まずが潰れるくらい内側に荷重していると、膝は内側に入りやすくなります。
このように重心の位置・バランスが変化すると、上に繋がっている骨の位置が変化しやすくなってしまい、関節の動きも変化していきます。
スクワット動作では、母趾球・小趾球・踵の3点にしっかり荷重させた状態を作ることが望ましいです。
正しいフォーム実践手順・ポイント
スクワット(自重)
スクワットは、下記の順序で実践していきます。
- 足は肩幅くらいに開く
- つま先は少し外側に向ける(約20-30°)
- 下にしゃがむ(足首・ひざ・股関節を曲げる)
- 立ち上がる(足首・ひざ・股関節を伸ばす)
基本的な実践の流れは上記の通りです。膝が内側に入らないようにするためには、基本的な実践の流れに加えてポイントを押さえることが大事です。
細かいポイントでいうと、他にもありますが、まずは今お伝えした6つのポイントを押さえてみてもらいたいです。とくに「③つま先と膝は常に同じ方向を向く」は、膝が内側に入らないようにするために非常に大事なポイントです。
バックスクワット(バーベル)
正しい動きのスクワットで足を強化しよう!
スクワットはトレーニングの中でも王道種目のひとつで多くの方が実践されています。「膝が内側に入る」「膝中心の動きになっている」「腰・背中が丸くなっている」など…一般的に身体の一部に過剰な負担がかかってしまうフォームで続けるのは危険です。
正しいスクワットのやり方・実施時のポイントをしっかりと押さえた中で取り組むようにしましょう!
正しい動きで実践することでボディメイク、パフォーマンスアップやケガの予防にも繋げることができると思います。